こんにちは。
今日は『6年「手品師」【正直、誠実】の指導案はこうする!』
このテーマで教材解説をします。
今日は定番教材、「手品師」です。
長年使用されている教材なので、知名度が高く、多くの実践がなされています。
また、「自己犠牲を助長する教材だ!」と批判されることもある教材です。
そんな意見についてもお答えしています。
ぜひ、道徳の定番教材についてこの記事で考えていきましょう!
では、解説です!
1 教材について
2 内容項目と教材
3 導入
4 発問
5 まとめ
順番に解説します。
1 教材について
A 主として自分自身に関すること
「正直、誠実」
5・6年の目標・・・・誠実に、明るい心で生活すること。
6年生「手品師」(日本文教出版)
あらすじ
売れない手品師がいました。
ある日、街で手品師は男の子に出会った。
男の子はお父さんが死んでお母さんが仕事でひとりぼっち。
手品師は元気を出してほしいと、男の子の前で手品を披露します。
男の子には笑顔が戻り、明日も来ると約束をした。
その日の夜、手品師は大きなステージに明日出られると誘われます。
手品師は迷いました。
しかし、手品師はその誘いを断りました。
次の日、手品師は町の片隅でたった一人のお客さんの前で手品を披露しました。
2 内容項目と教材
定番中の定番教材ですね。
実践が数多くなされているので、多くの実戦から自分がしっくりくるものを選ぶこともできます。
しかし、懸念点もあるのでそれを解説します。
「手品師」を授業する上で意識すること
①行動に注目しない
②代替案を考えない
順に解説します。
①行動に注目しない
「手品師」はいい話ですが、読みが浅いと間違った方向に授業を進めてしまいます。
それは、行動に注目してしまうことです。
手品師は結局、大舞台に行くことを選びませんでした。
現実的に同じような状況があれば、どちらを選ぶでしょうか。
大舞台のように目先にチャンスがあるなら、そちらを選ぶことも間違いではありません。
夢を掴むチャンスは逃していないのですから。
でも、男の子の方を選ぶといい話になりますから、この話のように『自己犠牲』を推奨する、という結論に向かってしまいます。
果たして、この世の中で自己犠牲だけをやっていて、充実した人生を送れるでしょうか。
確かに、自分の時間を他人のために使うことは大切なことです。
ボランティアなどの慈善事業はそういった人たちの善意で成り立っています。
しかし、手品師は境遇が違います。
自分の人生、キャリアのためにプライベートな約束を優先させることは、いつも正解とは言えません。
「自己犠牲」をすることがすばらしい、だから手品師のように自分の夢は時には諦めないといけない。
こんなお花畑のような結論だと、道徳は面白くありません。
このようなまとめをするから、「道徳は偽善の教科だ」と言われるのです。
それは浅い読みの授業だからに過ぎません。
違う視点から考えて、別の読みをすることで、ちがった見方をすることが大切です。
言葉を選ばずに言うなら、「手品師」を自己犠牲のための教材と言う人は、素人レベルの教材理解しかできていないです。
そのことを自覚し、教材研究に当たるべきでしょう。
②代替案を考えない
またちがった展開として、「手品師はどうすればよかったのか」という発問をしている実践があります。
これは「行動」に焦点を絞った発問です。
道徳は、「行為・行動」ではなく、「行為・行動を生む心」を考える教科です。
教材には書かれていない手品師の行動を考えることで、手品師の正しい行いを探っていく活動は、意味がありません。
例えば、答えとして次のようなものがあげられます。
・男の子を大舞台に連れてくれば一石二鳥。
・男の子に、一日ずらしてほしいと頼んで、大舞台の次の日に手品を見せる。
・売れっ子手品師になって、男の子にはまたいつかもっと立派な手品を見せる。
これらは教材には書かれていないので、「子どもが考えた感」はある意見です。
しかし、手品師の行動の代替案を考えて、その先には何が待っているのでしょうか。
「手品師」のあるべき行動を考えることは、「正解探し」にも似ています。
男の子の方を選んでも、大舞台の方を選んでもダメなら、もっといい行動を探そう。
それは、算数の答えを追求しているようなものです。
結局、正しい行動以外はしてはいけない、という考えから抜け出せていないのです。
道徳には正解がない、と言われますが、代替案を考えることは正解探しと同じことです。
ということで、
①行動に注目しない
②代替案を考えない
この2つは特に気をつけましょう。
では、どうすればよいのか。
ズバリ、手品師の心の動きに注目することです。
手品師の心は、話を通してずっと動いています。
手品師はなぜ、心が動いたのか、動かなかったらどう感じるのか。
それを考えていくことが大切です。
大舞台に誘われた時、手品師は行くかどうか迷いました。
なぜ迷ったのでしょうか?
夢だった大舞台に出られることと、男の子とした約束のこと、どちらも手品師にとって同じくらい重いことだから、悩んだのです。
では、大舞台に誘われて、「迷わずに男の子の方を選んだ」らどうでしょうか。
反対に、迷った末に大舞台を選んだら?
迷わずに大舞台を選んだら?
整理します。
①迷って男の子との約束を選ぶ。
②迷わずに男の子との約束を選ぶ。
③迷って大舞台を選ぶ。
④迷わずに大舞台を選ぶ。
一番誠実に感じるのはどれでしょうか?
またそれはなぜでしょうか?
迷わないということは、即決ということです。
男の子の方を即決するということは、大舞台を軽視していたのでしょうか。
それとも誘ってくれた友達のことを軽視していたのでしょうか。
また、即決して大舞台を選んだら、男の子との約束をないがしろにする、誠実とはほど遠い手品師の姿が見えてきます。
上の①〜④で、『誠実ランキング』をつけてると、どれが一番になるでしょうか。
子どもと一緒に考えてみたいですね。
また、内容項目についても考えます。
正直、誠実とはそれぞれどのような意味でしょうか。
それぞれ広辞苑では次のような意味です。
正直・・・心が正しく素直なこと
誠実・・・真面目で真心がこもっていること
うーん、言葉の意味はこのようになっていますが、
この言葉をどのように授業で使えばいいのでしょうか。
結論を言います。順番が大切なのです。
正直は、行動→言葉。
誠実は、言葉→行動なのです。
正直とは何でしょうか。
「正直に言いましょう。」等と使いますね。
これは、自分の行った行動を、
ウソいつわりなく言葉で表現しましょう、という意味です。
これは、行動が先にあって、そのあとに言葉がある。
行動→言葉ですね。
もっと具体的に考えてみます。
ある日、教室でAくんが花瓶を割ってしまい、
先生に見つかりました。
先生は「何があったか正直に言ってごらん。」と言います。
するとAくんは
「遊んでいて、手が当たって花瓶を割ってしまいました。ごめんなさい。」
と言いました。
Aくんは正直でしょうか?
これは、「花瓶を割ってしまった」(行動)Aくんは、
自分の行いを謝る(言葉)という流れです。
行動→言葉の流れのことを「正直」と呼ぶのです。
対して「誠実」はどうでしょうか。
正直と似ていますが、「正直に言いましょう。」のように
「誠実に言いましょう。」とは言いませんよね。
これは、先に言葉があるからなのです。
例えば約束を守る人。
この人は誠実と呼べるでしょう。
「約束をする」(言葉)行為の後に、「守る」(行動)があるという流れです。
言葉→行動、ですね。
発した言葉やルールに基づいて行動をすることを、
誠実と呼ぶのです。
話を戻します。指導要領には「正直、誠実」と
書いてあります。
これは、順番が大切です。「誠実、正直」とは
なっていないことがポイントです。
正直は、行動が先でした。
「正直」が先にくるということは、
指導要領では、「まず行動することが大切。」と言っているのです。
まずは行動をして、言葉で後から補足する。
言葉を先に言って行動するよりも、
まずは先にいいと思うことをやってみましょう。
動いてみて、初めて分かることがあるんです。
ここまでは拡大解釈かもしれませんが、
実際に教材研究をする際には、
「この教材は、正直に重きを置いているのか、誠実に重きを置いているのか。」を軸として考えましょう。
1つの教材で両方を大切に扱っているものはほとんどありません。
たいていは正直か誠実、どちらかの色が濃くなっています。
そして、正直なら正直、誠実なら誠実、重点がどちらか分かったら
その行動をしている人物に焦点を当てて、発問を作ります。
今回の「手品師」はどちらでしょうね??
3 導入
T:教師 C:子ども
T:誠実ってなんですか?
C:嘘をつかないこと。
C:真面目な人のこと。
※出てこなければ辞書で調べることも可能。
T:誠実な人になるために大切な心ってなんだと思いますか?
C:うそをつかない。
C:約束を守る。
T:今日は、「誠実」について考えていきましょう。
※※導入で手品を披露することは、興味づけとしてはいいですが、道徳の本質とは全く関係ないので時間がもったいないです。
4 発問
・手品師は、1日目と2日目の手品をしている気持ちは、同じだろうかちがうだろうか。
・最初と最後の手品師は、同じだろうか、ちがうだろうか。
・すぐに誘いを断らなかったのはなぜだろう。
・この話が「いい話」と思えるポイントはどこだろう。
・舞台の方を選んだら、手品師は悪い人だったのだろうか。
・手品師にキャッチフレーズをつけるなら、『○○○の手品師』
・手品師の夢はなんだろう。
・この手品師は、プロと呼べるだろうか。
・誘った友達は、なぜ断って怒らなかったのだろう。
5 まとめ
本当の誠実とは・・・
・あらゆる可能性を考える心。
・自分の心にうそをつかない。
・約束に対して真剣に向き合う。
これらのことが、子どもの言葉で表現できるといいですね!
はい、ということで今日は
『6年「手品師」【正直、誠実】の指導案はこうする!』
このテーマでお送りしました!
また明日もお楽しみに。