特別の教科 道徳

道徳導入の心構え

こんにちは。Kishです。
今日は「道徳導入の心構え」についてお話しします。
道徳の授業って難しいですよね。
その中でも,導入って特に難しいです。

「どうやったら子どもの興味を高められるの?」
「うまい導入をできたことがない。」
そんな悩みが,今日でスッキリするかもしれません。

今日の目次
1 導入の意味
2 導入の3パターン
3 最初と最後で同じことを聞く

では,本題にいきましょう。

1 導入の意味

授業の最初10分程度の時間を「導入」と呼びます。
導入を行う意図はなんでしょうか。
たった1つ。これだけです。

子どもの興味・関心を高める。

興味・関心が高い子は,自然と考え始めます。
また,話し合いで積極的に自分の意見を言い始めます。
今日の授業で気付かせたいことの理解を深めるため,
導入はとても重要と言えます。

 

2 導入の3パターン

では,道徳の導入はどのようにすればよいのでしょうか。
道徳の導入では,「現在の道徳的価値の立ち位置」を確認しましょう。
例えば,「親切」について考える時は,
「親切ってどういうことかな?」と問い,
「優しくすること」
「人を助けること」
「人が喜ぶことをすること」
と子どもたちが発表したとします。

この段階で,
「『親切は,何かを人のためにすること』ですね。」と定義付けをすることができます。
その後,その定義をもとにして,
教材を読み,深めたり広げたりしていきます。

授業後半では,
この定義が変わったり,
言葉が付けくわえられたり,
定義が増えたり
すると,子どもたちの話し合いが深まり,
道徳的な価値に気付いたと言えます。
では、どんな導入をすればよいのでしょうか。
発問は,これまでの学習等の流れがありますので,
今回は「どんな発問をすればよいのか」という話は置いておきます。
ここでは,子どもたちの意見をどう受け止めて,話し合いにつなげるか,
という点についてお話します。
導入には3つのパターンがあります。

①0を1にする。
②2を3にする。
③5を減らす。

それぞれ解説します。

①0を1にする

例えば「親切ってなんだろう?」と聞いた時に,
子どもたちが言葉にできず,シーンとなることがあります。
しかし,それは先生の発問も,子どもたちも悪くありません。
これまで,親切について考える経験がなかっただけなのです。
ないなら,作ればいいのです。
「親切って難しいですね。
今日は,みんなで考えて,親切はナントカと
1つでも見つかるといいですね!」

と返すと,
子どもたちは「考えたい!」「親切ってどういうことなのか,見つけたい!」と
興味が高まる事でしょう。

②2を3にする。

同じく「親切ってなんだろう?」と聞いた時に,
いくつか子どもたちが発言してきた場合です。
ここでは
 「人に優しくすること」
 「人が喜ぶことをすること」
とまとめたとします。
ここでこう言います。
先生「みんなの考えが2つにまとまりましたね。
では,親切って3つ目の説明があるかな?」
子ども「うーん。」
先生「では,今日は親切の3つ目をみんなで考えてみましょう。」
どうでしょう。
自然に話し合いに入れる風景が想像できませんか?

③5を減らす

この場合は「子どもがたくさんの価値を言ってきた時」です。
ここでは,気付きが多いことはいいことなのですが,
あえて減らす方向にもっていきます。
なぜか。

最終的な定義は短くて少ないほどいいからです。

内容項目によってその数は違いますが,
人が記憶できるのはせいぜい2~4つでしょう。
あまり多いと,1つ1つの定義がぶれてしまいます。
例えば「親切」を例にすると
 ・親切は人を喜ばせる
 ・親切は自分が気付いた時にするのが正解
 ・何もせず見守る親切もある。
 ・知らない人よりも友達にする親切の方が相手のことを気遣える。
 ・親切は人から人へとつながっていく。
どうでしょう。
それぞれの定義が質のいいものであっても,
頭に全て入るでしょうか。
理解するだけでは人は行動できません。
理解した上で納得しなければ,人は動きません。
そのために,定義は少なければ少ないほどいいのです。

ということで,
導入で子どもがたくさんの観点から意見を言ってきたら,
減らす方向に向けます。

「たくさんの親切があるんですね。
では今日は,この中から
本当に大切なものは何か,
考えて行きましょう。」

と数を絞るようにします。
①~③のパターン,いかがでしょうか。
何が言いたいかというと,

子どもの意見が,全く出なくても,たくさん出ても焦らないで大丈夫!
ということです。
先生の計画したとおりに授業は進みません。
もちろん計画という授業の骨組みは必要ですが,
その計画が子どもの思考を制限する「柵」になってはいけません。
子どもの思考を広げる,その方向付けをすることが導入の目的です。
「話し合いたいな。」
「考えたいな。」
と子どもがワクワクするような導入を考えてみましょう!
そのためには,先生が懐を広くもっておくことが必要です。
3つのパターンを頭に入れ,ドンと構えておいてください。

 

3 最初と最後で同じことを聞く

導入で聞いたことを,あえて終末にも聞くという手法があります。
「親切ってどういうこと?」と導入で聞き,
終末でも「親切ってどういうこと?」と聞きます。
「同じことを聞いてどうするんだ。」
そんなことを言う人は,答えが変わらないと思っていますね。
子どもは話し合いで道徳的な価値に気付き,深めていきます。
終末では,何か1つでも獲得した気付きをもった子どもの姿になっています。
導入と終末で同じことを聞くことで,子どもの気付きを見取りやすくなります。

「前は○○だと思っていたけど,□□だということに気付いた。」

これはメタ認知といって,効果的な学習の過程であると言われています。
終末で,子ども自身が心の高まりを感じられるような
導入と話し合いをしたいですね。
導入と終末で気付きを見取ることができれば,
その道徳の授業は成功であると言えます。

ということで,今日は
1 導入の意味
2 導入の3パターン
3 最初と最後で同じことを聞く
についてお話ししました。

道徳の授業が楽しみになる,
そう思える先生が増えることを願って
これからも発信していきます。

ではまた次回!