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教員免許更新制、ついに廃止が決定。でも・・・

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※この記事は6〜7分で読めます。

こんにちは。
小学校教諭15年の現役教師が、教育情報を独自の観点から発信をします。

今日は『教員免許更新制、ついに廃止が決定。でも・・・』
このテーマでお話します。

2021年7月10日(土)次の記事が流れました。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6398376

(記事の概要)
文部科学省は、教員免許に10年の有効期限を設け、更新の際に講習の受講を義務づける「教員免許更新制」を廃止する方針を固めた。政府関係者への取材で判明した。今夏にも廃止案を中央教育審議会に示し、来年の通常国会で廃止に必要な法改正を目指す。

この記事の結論です。

教員免許保持者にとってうれしいニュース。
でも、教育の制度改革の闇も見えたので、日本の教育の未来はまだまだ暗い。

そもそも教員免許更新制とは

平成21年(2009年)から本格的に始まった国の制度です。

文科省はホームページで次のように説明しています。

教員免許更新制は、その時々で教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すものです。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/koushin/001/1316077.htm

つまり、「先生するなら、勉強し続けろよ」って制度です。
教員免許の期限である10年に1回、大学などが開講する講座を30時間以上受けて、申請をすれば免許の更新ができます。

免許更新制が始まって2021年の今年で13年目。
つまり、現在学校で働いているほぼ全員の先生が免許更新を1度はしたことになります。

なぜ「ほぼ全員」というかというと、次のような人たちがいるからです。

①免許を取得して10年未満の先生は、期限がきていないので更新をする必要がない。
②制度が始まって11年目からは『2周目』になるので、2度更新をした先生もいる。

人によって格差が生まれることが、免許更新制の問題の一つとされていました。

免許更新が生んだ問題

先に言いましたが、「人によって更新回数の格差がある」ことが問題でした。
実は、この教員免許更新制には他にもたくさんの問題があったのです。

 廃止を訴える熱が高まっていた

まず大きな問題は、30時間以上の講座を受講しなければならないこと。

受講する大学や講座は自分で調べて、自分で申し込まなければいけませんでした。

また、ブラックな労働環境と言われている先生の仕事時間の合間をぬって、30時間以上の講座を受けなければいけないんです。

多くの先生が、比較的時間のある夏休みに受講を希望します。

しかし、受け皿である大学の講座は定員が限られているので、講座は人気・不人気に関わらずすぐにいっぱいになります。

定員にもれた人は、教育委員会が「しょうがないですね〜」と更新を免除してくれるわけないので、意地でも講座を探さないといけません。中には、県外まで泊まり込みで行って受講する人もいるほど。

そりゃ必死ですよ。

だって更新しないと働けないんですから。

記事にもあるとおり、「うっかり失効」する人が多いのも、うなづけます。

更新制の大変さを知っている人なら、「いや、ちゃんと確認して更新しろよ」とは、決して言えないです。

さらにさらに、大学の講座申込みの開始日時が平日の昼間とかなので、忙しい先生は申し込めないんです。

こういった小さいストレスも、先生たちの不満をためる要因になってました。

そして、一番大きな問題は、講座の費用が全額自己負担であること。
全国でほぼ差はなく、30時間の講座と更新の申請に必要な費用は合計31,000円ほど。
これは一切補助がなく、全額自己負担です。

 

「教師は残業代出るから儲かってるんだし、いいだろ!」

あ、誤解されてるんで言っておきますけど、教師は残業代出ませんからね。

教員調整額という、月に1万円前後の手当が支給されるだけ。
定時を過ぎればみんなタダ働きです。

だから、10年に1回、30時間以上の時間を奪われ、約3万円のお金ももっていかれ、それだけかけても、講座で得られる情報は、現場で生きるものではなく、理論や歴史などが大半です。

学びがあるなら、それだけの対価を払う必要があるでしょう。

しかし、免許更新制の目的にあるような「教師の資質・能力の向上」に、大学の講座の内容が適していないことも、先生たちの不満の1つでした。

勉強という名の研修なら、日々忙しい中、教育委員会等が開催する研修に行ってますからね。先生の疲れの一因は「研修疲れ」でもあります。

でも反対をする団体もあった

免許更新制に反対する団体も合ったんです。

どこかわかりますか?

現場の先生たちは、時間もお金もとられるので負担。
では、そのお金はどこにいくのか。

はい、大学ですね。
大学は唯一、この廃止に向けての議論で反対をしていました。

正直に言ってましたよ。
「免許更新は貴重な財源だ」って。

そりゃ反対しますよね。
収入が大幅減になるんですから。

うれしいニュースだ。だけど・・・

このニュースを聞いてよろこんだ人は多いでしょう。

でも、ちょっと冷静に考えてみませんか。

しかし、実は0.1%しか仕事は減らない

実は教員免許更新制がなくなっても、現場の教師の仕事時間は0.1%%しか減らないんです。

考えてみましょう。

教師の1日の平均勤務時間は、小学校11時間15分、中学校で11時間32分です。
自由法曹団HPより)

1日11時間として考えます。
月に22日、年間で264日働くとすると、11時間×264日=2904時間
これが10年分で29040時間。

そのうち免許更新の受講時間は30時間。
申請にかける時間や講座会場への移動時間として10時間を入れても40時間。

つまり40時間÷29040時間=0.1%しか減らないことになります。

今回の廃止のニュース。
現場の先生の正直な声としては、
「結局10年に1回やってくる『忙しい年』がなくなるだけ。」
「慢性的に忙しい。」
というのが正直なところなんです。

そもそも制度自体がありえなかった

廃止のニュースはうれしいんですが、そもそも制度自体がありえませんでした。
やっと、常識的な方向に制度が進んでいる、というだけの話。

そんなありえない制度が導入されて13年。

「やらなきゃならん」状態に全員追い込まれたので、
感覚がマヒしたところに「やめますよ」と言われて喜んでいるだけ。

重たい荷物をいきなり持たされて、しばらくしたら「はい、荷物持ってあげます。ラクになったでしょ。」と言われてることと同じ。

やってること、きたないですよね。

制度改革は時間がかかる。

他にも改革すべき問題は山積み。

教育の現場は、解決すべき問題がまだまだたくさんあります。  

・道徳・外国語の教科化による研修・評価・授業研究などの負担の増加
・少人数学級の増加による学校の統廃合
・教える内容の増加(ビルド&ビルドと言われています)
・休日出勤を前提にしたかのようなキャパオーバーの業務量
・部活指導

他にもこの免許更新制が原因と言われる人手不足、成り手不足など、教育には「諸課題」と一言で済まされてしまう問題が山ほどあります。 

もちろん、今回の免許更新制の廃止のニュースはうれしいです。

でも、これを機に他の制度についても見直して、縮小や廃止をどんどん進めてほしいですね。

学校は、先生を苦しめる場ではなくて、先生がハツラツとした姿で子どもと関わり、教区をする場ですから。

先生の心の余裕が、いい教育を生みます。 

今回のニュースも来年の結局話

記事にあるように更新の廃止は「来夏の国会で法改正」ということです。

ということは、今年が免許更新の年にあたっている人は、更新をしなければいけません。
すぐに止まらないので。

他にも、

・来年が更新期限の人はどうなるのか。
・すでに講座を申し込んでいる人はどうなるのか。
・更新回数が0回、1回、2回の人の格差はどう説明するのか。

「お金を返せ」という声も出てくるでしょうが、返金などはおそらくないでしょう。

先生たちから搾取した時間とお金、失わせた時間とお金が、日本の教育に莫大な損失であることを、文科省、政府は自覚すべきでしょう。

廃止に向けての今後の細かい調整の議論が、先生たちにとって愛のあるものであることを期待します。

まとめ

教員免許更新制の廃止はうれしいニュース。
でも、冷静に考えると、改革のスピードが非常に遅い。
現場で働く教師は、教育改革は自分のできるところからやっていこう。
国を待っていては自分がやられる。