こんにちは。
今日は『3年「長なわ大会の新記録」【正直、誠実】の指導案はこうする!』
このテーマで教材解説をします。
「正直に言いましょう」
「誠実な人」
などと、
正直や誠実については、学校生活で考える場面が多いです。
ということは、子どもたちにとっても身近な内容項目です。
正直に言うこと、誠実に生きることの大切さは知っていますが、
実際に正直さが求められる場面では
自分の利益やプライド、怒られないという恐怖や不利益の回避など、
様々なことが、正直さを邪魔します。
宿題をやっていないけど、「やったけど忘れました」と言う。
自分だけ怒られたくないから、「ぼくだけじゃないです。」と言う。
意見はもっているけど、発表で間違えて笑われたくないから、
前の人が言ったことを繰り返す。
などなど、正直さを阻害する要素は、
数え切れないほどあります。
「正直、誠実」を扱う授業では、
その大切さを45分かけて伝えても「のれんに腕押し」です。
すでに子どもは知っているのですから。
そうではなく、正直な心とは何か、
誠実とはどんな心から生まれるのか、
という本質を考えて核心に気付いた時、
「やってみたい!」と子どもの心の内側から意欲がわいてきます。
(これを道徳的実践力と言います。)
そんな姿を目指して、授業を組み立てていきましょう!
では、解説です!
1 教材について
2 内容項目と教材
3 導入
4 発問
5 まとめ
順番に解説します。
1 教材について
A 主として自分自身に関すること
「正直、誠実」
3・4年の目標・・・・過ちは素直に改め、正直に明るい心で生活すること
3年生「長なわ大会の新記録」(光村図書)
全校長なわ大会に向けて、守のクラスも練習を重ねています。
守は足をけがしているので時計係です。
練習の結果を記録する表には、隣のクラスが107回跳んだと記録されました。
守のクラスは93回。
いよいよ大会本番。
守のクラスは1回目は失敗しましたが、2回目は100回を越えました。
みんなの数える声が大きくなり、守もその姿を見つめていました。
「107、108,109!」
「あ、時間!」守は心の中で叫んだ。
ストップ!と急いで叫んだが、ルールの3分を3秒オーバーしていた。
真理がかけよってきてストップウォッチを覗き込みましたが、守は急いで数字をゼロに戻しました。
真理は「たった3秒だし、だまってていいよ。」と言いました。
守は、みんなの練習していた姿が浮かび、手の中のストップウォッチが重くなっていくように感じた。
2 内容項目と教材
まずは、正直、誠実のそれぞれの意味について考えましょう。
それぞれ広辞苑で調べると、
正直・・・心が正しく素直なこと
誠実・・・真面目で真心がこもっていること
とありました。
うーん、言葉の意味はこのようになっていますが、この言葉をどのように授業で使えばいいのでしょうか。
結論を言います。順番が大切なのです。
正直は、行動が先で言葉が後。
誠実は、言葉が先、行動が後なのです。
正直とは何でしょうか。
「正直に言いましょう。」等と使いますね。
これは、自分の行った行動を、嘘偽りなく言葉で表現しましょう、という意味です。
行動→言葉ですね。
もっと具体的に例をあげましょう。
Aくんが花瓶を割ってしまい、先生に見つかりました。
先生は「何があったか正直に言ってごらん。」と言います。
するとAくんは「遊んでいて、手が当たって花瓶を割ってしまいました。ごめんなさい。」と言いました。
これは、「花瓶を割ってしまった」(行動)Aくんは、自分の行いを謝る(言葉)という流れです。
このように、行動→言葉の流れのことを、「正直」と呼ぶのです。
対して「誠実」はどうでしょうか。
正直と似ていますが、「正直に言いましょう。」のように「誠実に言いましょう。」とは言いませんよね。
これは、先に言葉があるからなのです。
例えば、約束を守る人。
この人は誠実と呼べるでしょう。
これは、「約束をする」(言葉)行為の後に、「守る」(行動)があるという流れです。
発した言葉やルールに基づいて行動をすることを、誠実と呼ぶのです。
ここでもう一度内容項目の言葉を見てみます。
Aの内容項目には「正直、誠実」とあります。
これは、順番が大切です。「誠実、正直」になっていないことがポイントです。
復習しましょう。先にくる正直は、行動が先にきました。
「正直」が先にくるということは、指導要領では、「まず行動することが大切。」と言っているのです。
まずは行動をして、言葉で後から補足する。
言葉を先に言って行動するよりも、まずは先にいいと思うことをやってみましょう。
動いてみて、初めて分かることがあるんです。
ここまでは拡大解釈かもしれませんが、実際に教材研究をする際には、
「この教材は、正直に重きを置いているのか、誠実に重きを置いているのか。」
を考えましょう。
1つの教材で両方を大切に扱っているものはほとんどありません。
たいていは正直か誠実、どちらかの色が濃くなっています。
そして、正直なら正直、誠実なら誠実、重点がどちらか分かったら、
その行動をしている人物に焦点を当てて、発問を作ります。
ではその視点で教材を見てみます。
守は、正直でしょうか、誠実でしょうか。
ルールは、みんなで決めた約束事です。
そのルールを守ろうという意識から、罪悪感を感じてストップウォッチを重く感じているので、
守は誠実の視点で考えるとよいでしょう。
正直に自分のミスを告白する、という視点で見ることもできますが、
あくまで最初にあるのは「長縄のルール」です。
ルールがある以上は、守ることが絶対ですし、それが正しいとみんな思っています。
ルールという言葉を、行動として守るか守らないか、その順で考えましょう。
しかし、守は真理がストップウォッチを覗き込んだら、あわててリセットボタンを教えてゼロに戻しています。
この時の守の気持ちを考えたいですね。
真理にもバレずに、自分だけが「3秒オーバー」の事実を知っていれば、だれも傷つけないし、みんな幸せでしょう。
守がゼロに戻した行為を、みんなを勝たせたい気持ちだけでおこなったとしたら、それは疑問が残ります。
勝たせたいだけなら、
真理に本当のことを言う必要はないし、
真理の言うとおりにすればいいし、
ストップウォッチを見つめて罪悪感を感じる必要はないからです。
ということは、「ストップウォッチをゼロにした」真意は他にもありそうです。
ここが、子どもと話し合いたいポイントですね。
守は、みんなのためを思ってゼロにしたのではないでしょうか。
3秒オーバーという事実は、自分だけが抱えておけばいい。
みんなのために、この事実は隠しておきたい。
そう思って咄嗟にゼロにしてしまったが、真理が近づいてきたので真実を打ち明けた。
または、守は自分を守りたくてゼロにしたのではないでしょうか。
3秒とはいえ、時間をオーバーして自分の仕事をきちんと果たせていなかったことは事実。
新記録が出たにしろ出ていないにしろ、自分の仕事を果たせていないことを人に知られたくなかった。
だから、咄嗟にゼロにしてしまった。
結局、守は保身のためにゼロにしたのではないか。
このように「ストップウォッチをゼロにした」ときの守の気持ちは、考えてみる価値はありそうですね!
ではここから、どのようにまとめていけばいいのでしょうか。
守はルールを守り、3秒オーバーしたことをきちんと告げ、
誠実な行動をすることが理想だと誰しも考えるでしょう。
しかし、守の正しい行動を結論づけたところで、あまり意味はないでしょう。
誠実な行動は誰でも知っているし、授業前からわかっていることです。
でも、知っているけどできないことなのです。
友達に悪口を言ってはいけない。
廊下を走ってはいけない。
忘れ物をしてはいけない。
知っているけど守れないのは、子どもも大人も同じです。
道徳で考えるべきことは、正しい行動ではなく、
人が誠実に行動できないときの心の動きです。
守の気持ちに寄り添い、決して批判的な立場ではなく、
「自分にもそんな気持ちがあるな。」
「じぶんだったら真理の言ったとおりにするかもしれないな。」
などと共感的理解をすることが必要です。
守が悪い、真理がいい、などと善悪の判断基準ではなく、
気持ちに寄り添うことで、誠実の大事なポイントが見えてくることでしょう。
3 導入
T:教師 C:子ども
T:誠実ってどういう意味ですか?
C:うーん。
T:辞書で調べてみましょう。
(辞書の意味を読み上げる)
今日は、この誠実という心について考えましょう。
4 発問
・このクラスはいいクラスだろうか。
・守が正直に時間のことを伝えたら、みんなは怒るだろうか。
・真理は悪い子なのだろうか。
・隣のクラスの子は、全てを知ったらどう思うだろうか。
・なぜ、守はストップウォッチが重くなっていくように感じたのだろう。
・あわててストップウォッチをゼロにしたのだから、守には「ごまかそう」と思う気持ちがあったのではないか。
・ごまかせるものと、ごまかせないものはそれぞれなんだろう。
・みんなが喜ぶなら、黙っていてもいいのではないか。
・守が正直に伝えたら、喜ぶのはだれだろう。
・もし90回跳んで3分3秒だったら、守はどうしただろうか。
・もし150回跳んで3分3秒だったら、守はどうしただろうか。
5 まとめ
・誠実な行動をするには、勇気も必要。
・誠実な行動をすると、人を傷つけることもある。
これらは、誠実に行動する時のポイントです。
このポイントを押さえてまとめができるといいですね!
はい、ということで今日は
『3年「長なわ大会の新記録」【正直、誠実】の指導案はこうする!』
このテーマでお送りしました!
また明日もお楽しみに。
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