こんにちは。
今日は『3年「あこがれの人」【善悪の判断】の指導案はこうする!』
このテーマで教材解説をします。
今日の内容項目は、
「善悪の判断、自律、自由と責任」です。
比較的、分かりやすくて授業をしやすい項目ですよね。
いいことと悪いことの区別を
「教える」という意識が先行してしまいますが、
区別するべきことを「教える」のではなく、
自分はいいと思うか悪いと思うか
「考えて答えを出す」ことを大切にします。
強いて教えるとすれば、
自分の判断基準(ものさし)をもつことの大切さです。
まずは、この意識をもって、授業に臨んでくださいね!
では、解説です!
順番に解説します。
1 教材について
3年生「あこがれの人」(日本文教出版)
A 主として自分自身に関すること
「善悪の判断、自律、自由と責任」
3・4年の目標・・・・正しいと判断したことは、自信をもって行うこと。
「あこがれの人」あらすじ
あけみは、あこがれの「郡上おどりジュニア」に入った。
一年経ち、思ったように上達しないので、練習に行くのがいやになっていた。
そんなとき、クラスの友達が練習の日に「買い物に行こう」と誘ってきた。
あけみは練習をさぼって買い物に行こうか迷う。
すると、その帰り道、「郡上おどりジュニア」に所属していた
あこがれの先輩とばったり会う。
ちょっとした立ち話だったが、
あけみは先輩との練習や、
先輩のようになると心に決めたことを思い出した。
あけみは、友達に「やっぱり練習に行くね」と言った。
2 内容項目と教材
・「善悪の判断、自律、自由と責任」は、次の3つに分けて考えます。
①善悪の判断
②自律
③自由と責任
それぞれ、似ていますが解釈が異なるので、
今回授業をする教材が、
①~③のどれに当たるかを考える必要があります。
・「あこがれの人」は、②自律になります。
①から③の順で、難易度が高くなります。
つまり、①に比べて③は難しい内容項目ということです。
・「自律」は辞書で調べると、
他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること。
とあります。
まさしく、教材後半のあけみの姿ですね。
・ここで押えておきたいことは、
「練習をさぼることは、本当に悪いことなのか」ということです。
確かに練習をさぼることは、一般的にはダメなことです。
しかし、その一般論をさらに深掘りして考えてみましょう。
・練習をさぼるということは、自分の能力が上達しません。
それは、だれにも迷惑をかけていません。
ということは、『自分がよければさぼってもいい』
ということになります。
・また、練習がいやになることは誰にだってあります。
そんなとき、
「1回もさぼることは許されないので、練習に取り組むべき」と
いう前提をつきつけられることは、
本当に正しいと言えるのでしょうか。
・この教材は気を付けないと、
「さぼることはダメだから、あけみの行動はよくない」
という前提で授業が進んでしまいます。
これでは、面白くない道徳になってしまいます。
・現実的にはごまかしてさぼることもあるし、
いやになる心はだれだって出てきます。
・大切なことは、
『いやになる心はだれにだって出てくる』
『いやになったとき、どんなことを考えることがよいか』
という前提に立って授業をすることです。
・あけみは、先輩という理想像を思い浮かべて、
初心を思い出して再び決意します。
しかし、ここにスポットを当てて話を進めると、
「目標に向かってあきらめないでがんばる」という
『希望と勇気、努力と強い意志』の内容項目になってしまいます。
・多面的に考えるために、
あけみが先輩のようになりたいと
思った心に触れることは必要ですが、
ここは授業の核になる部分ではありません。
・自律して行動するために大切なことは、
「自分で責任を負えるかどうかを、
時と場合と状況に応じて、よく考えて判断する」
ことです。
この「判断」するための
「時、場合、状況」をよく考える心が、
この授業の核となります。
・「やりたいことをやる」という観点でみると、
あけみは郡上おどりもやりたいことだし、
買い物もやりたいことです。
ということは、さぼることは買い物に行くことだから、
やりたいことなので、買い物はOKということになります。
こう言われると、「あれ?」となりますね。
・郡上おどりも買い物も、「やりたいこと」だから、
どちらをやってもいい。
これについて、考えてみるのも面白いですね!
・「あこがれの人」のあとに、
同じ内容項目であと2つ教材があります。
このような同じ内容項目で
複数教材があるものを、
重点項目といいます。
・今回の「あこがれの人」のまとめが、
次の「たからさがし」の導入になると、
重点項目が積み上がって学習を進められますね。
3 導入
・将来の夢や習い事を例に出したくなりますが、
この場合はあまり適切ではありません。
・それよりも、2学期以降にある「行事」を例に出しましょう。
例えば運動会や学習発表会。
・近い未来の行事なら、イメージをしやすいし、
学級活動的な指導とも重なるからです。
・「○○の練習をがんばっているとき、
やりたくなくなったらどうしたらいい?」と聞きます。
いろいろと子どもは意見を言うでしょう。
全て受け止めて、
「なるほど。では、今日は『やりたくない心』について考えます。」
と言って教材に入りましょう。
4 発問
あくまでもわたしが考える例です。
児童の実態や、授業者が聞いてみたい!と思うものを
以下を参考にして発問としてください。
・さぼることは、なぜいけないのだろう?
・郡上おどりも買い物も、あけみのやりたいことだから
どちらをやってもいいのではないか。
・あけみは今後、さぼりたいと思うことはないのだろうか。
・練習がいやなら、あけみは郡上おどりが上手ではないからやめたほうがいいのではないか。
・さぼって買い物に行ったら、また次の練習をがんばれるのではないか。
・誘ってくれた友達は、あけみになんというだろう。
・あけみは、友達よりも先輩の方が大事なのだろうか。
※気を付けること
×あけみは友達になんと言って断ればいいのだろう。
×あけみはこのあとどうすればいいのだろう。
といった「行動」を考える発問は、
あまりいいとは言えません。
なぜなら、道徳は「行為」ではなく
「行為を生む心」を考える教科だからです。
5 まとめ
・自分で責任を負えるかどうかを、
時と場合と状況に応じて、
よく考えて判断する
このことが、子どもの言葉で表現できたらいいですね。
・自分で落ち着いて考える
・本当にそう思うか考える
などのまとめの言葉が予想できるでしょうか。
・子どもの言葉でまとめを構成することは、
先生がまとめの文言を提示する場合に比べて
学びが大きく違います。
・『自分で責任を負えるかどうかを、
時と場合と状況に応じて、
よく考えて判断する』
こんな感じのことを子どもが言ってきたら、
逃さず板書しましょう!
はい、ということで今日は
『3年「あこがれの人」【善悪の判断】の指導案はこうする!』
このテーマでお送りしました!