特別の教科 道徳

道徳で大切な考え方 『多面的・多角的な見方』

こんにちは。Kishです。
道徳の授業って難しいですよね。
子どもに何を考えさせればいいのか。
子どもが言っていることはねらいに向かっているのか分からない。
どうまとめたらいいのか分からない。
そんな疑問がちょっと解決するのがこの記事です。

では今日の目次です。
・多面的とは
・多面的の例
・多角的とは
・多角的の例
・実際の授業では

早速本題にいきましょう。
2019年から小学校では道徳が教科となり,
「特別の教科 道徳」と名称が変更になりました。
学習指導要領も大幅に改訂されました。
特に目立ったのは,
「多面的・多角的な見方」
というキーワードが強調されて書かれていることです。
この「多面的・多角的な見方」とはどのようなものなのでしょうか。
それぞれ解説をしていきます。

・多面的とは

まずは多面的についてです。
ズバリ,多面的とはこれです。

「今まで一面だと思っていたものが,多くの面を持っていると気付く見方のこと」

これに尽きます。
図で見ると分かりやすいですね。

ある事象に対して,今まで一面しかないボールのようなものだと思っていたけど,
よく見たらたくさんの面がある多面体だったことに気付いた。
これが,多面的な見方なのです。

・多面的の例

「たくさんの面があることは分かったけど,つまりどういうこと?」
では,1つ例を出して説明します。

あなたは車を運転しますか?
車の運転をすることを想定して,
多面的について考えてみましょう。
車を運転する時に関係することと言えば,
道路交通法でしょう。
信号や標識のルールを守らなければ
事故が多発し,無秩序な道路となり,
安心して走ることはできなくなるでしょう。
これは,内容項目に当てはめると,「規則の尊重」です。
では,車の運転をする際は,「規則の尊重」だけを考えておけばいいのでしょうか。
答えは,NOです。
「規則の尊重」だけを考えて運転をしている人はいないでしょう。

なぜか。

例えば,狭い道を車で走っていた時,
歩道すれすれのところをお年寄りが歩いていたとします。
あなたはどうしますか?
速度を落として,ぶつかる危険を最小限にしようとしませんか?
これは内容項目に当てはめると,「思いやり」と言えます。
また,車線を変更する際,横の車に道を譲ってもらったとします。
あなたはどうしますか?
ハザードを数回点滅させて,「ありがとう」の意味を伝えませんか?
これは,内容項目に当てはめると「感謝」と言えます。
また,譲ってくれた人は「親切」と言えるでしょう。

他にも,チャイルドシートに小さい子を乗せていたら,
無茶な運転はせず,いつも以上に気をつけて運転をするでしょう。
これは,「家族愛」と言えます。

他にも,信号が黄色に変わる直前に通り過ぎようとした時,
あ,信号が赤になるな,と判断して止まると思います。
これは「善悪の判断」

自動車事故のニュースを見たら命について思いを少なからずめぐらせます。
これは,「生命の尊さ」

初心者マークをつけている車を見たら,
車間距離を空けたり,速度がゆっくりでも合わせて走ったりします。
これは,自分が初心者だった頃の気持ちを思い出し,
相手の気持ちを想像しているからです。
これは,「相互理解,寛容」と言えます。

このように,『車の運転』という1つの事象に対して,

規則の尊重
思いやり
感謝
親切
家族愛
善悪の判断
生命の尊さ
相互理解,寛容

これだけの視点をもてるのです。
これが,多面的な見方です。
今まで1つの視点でしか見ていなかったものが,
話し合いによって多くの視点があることに気付く。
これは,1人では難しいです。
話し合いによって得られるものなのです。
教科書では,教材は全て内容項目に当てはめられています。
その意味は,該当の内容項目だけのことしか話し合ってはいけない,
というわけではありません。
「該当の内容項目はあくまで中心のもので,それを基本として多くの道徳的価値に気付いてね。」
という意味なのです。
授業者が内容項目に縛られていては,子どもの多面的な思考は絶対に生まれません。
先ほどの運転の例だと,「規則の尊重」に授業者が縛られ,
子どもが「思いやり」に気付いて発表してきたら,
「それは今関係ないでしょ。」と切り捨てて終わりでしょう。
ある意味では,ヘリクツと捉えられるからです。
それでは,道徳の授業は楽しくないし,
「先生の気に入る答えを探す時間」となってしまい,
心を育む道徳のねらいは到底達成されません。
子どもの多面的な見方を受け止めるため,
まずは授業者が多面的な見方をできるようになりましょう。

・多角的とは

次は多角的についてです。
多角的は,多面的な見方の上に成り立ちます。
ズバリ,多角的とはこれです。
「ある一面について,いろいろな角度の見方があると気付くこと」
これに尽きます。
これも図で見ると分かりやすいですね。


ある一面に対して,一方向だけではなく,
下からや上から,左右から見ることで,
見え方が変わってくるということ。
これが多角的な見方なのです。

・多角的の例

「kish先生! 多角的の例をあげてください!」
待ってました。
説明します。
ここでは「親切にする」ことについて考えます。
次の場合はどう思いますか?

困っている友達に声をかける

これはいいことですし,親切と言えるでしょう。
では,次の場合はどう思いますか?

算数で,もう少しで答えが出そうな,一生懸命考えている友達にやり方を教える。

これはいいことでしょうか?
うーん・・・とちょっと考えてしまいますよね。
ここから思考は次のように発展します。
「親切っていうのは,何かをしてあげればいいということではなさそうだな。」
「『何もしない』という親切もあるのかな。」
これが,多角的な見方のよさです。

今まで当たり前だと思っていたことが,
発問によって立ち止まり,新たな見方を生む。
今まで一面(当たり前)だと思っていたことが,
発問によって違う角度(多角的な見方)に気付きだすのです。
多角的な考え方,どうでしょうか。

「算数で,もう少しで答えが出そうな,
一生懸命考えている友達にやり方を教えることは,親切と言えるのだろうか?」

担任している子どもたちに聞いてみたくなりませんか?
それが,道徳の面白さなのです。

・実際の授業では

「多面的・多角的については分かったけど,実際の授業ではどうすればいいの?」
その疑問は,授業づくりの話題も入るので,
また違う記事で詳しくお伝えします。
「多面的」と「多角的」な視点から授業づくりについて伝えるとするならば,
ポイントは2つです。

①授業者が多面的・多角的に見る。
②子どもの意見から学ぶ

この2つです。

①授業者が多面的・多角的に見る
授業をする前に,狭い範囲で思考をしていては,
到底子どもの発表を受け止めることは難しいでしょう。
1人で考えて,1つ内容項目しか出てこないのです。
数十人(または複数人)いる子ども達の無限に広がる思考を
受け止めきれるはずがありません。
先ほどの運転の例なら,
「規則の尊重」という該当の内容項目以外に
2~3この内容項目の広がりを予想できていれば充分です。

②子どもの意見から学ぶ
そうは言っても,子どもの思考は無限大です。
間違いなく,教師の予想を越えてきます。
その時に,「それは違う」と否定するのではなく,
「なるほど。」と一旦受け止めてください。
そこから,「そんな見方もあるのか。」と
授業者自身が思考の広がりを感じてください。
授業をしながら,授業者自身が
「なるほど! そんな考え方もあるか!」と
思わず手を叩きたくなるような瞬間が訪れるでしょう。
それこそ,道徳の授業の醍醐味です。
だから道徳というのは面白いんですね!

ということで,
今日は「道徳で大切な考え方『多面的・多角的な見方』」について
お伝えしました。

質問やリクエストあれば,コメントお願いします。
ではまた次回をお楽しみに!