こんにちは。
今日は『5年「母さんの歌」【感動、畏敬の念】の指導案はこうする!』
このテーマで教材解説をします。
Dの内容項目は、
「価値の広がりを目指す」
ものではありません。
A~Cの内容項目は,広がりを目指すものです。
例えば、親切は「何かをしてあげること」だ
と思っていた子どもたちが、
授業で議論をすることで、
「何もしない親切もある」と気付いたら、
それは見方が広がったと言えるでしょう。
しかし、Dの内容項目はそのような広がりは
ほとんど期待できません。
そもそも抽象的なものが多く、
議論で広がったとしても、
さらに抽象的なものになってしまうからです。
そうなると余計に
「道徳は難しい!」と考える
子どもや先生を増やすだけです。
そうではなくDだけは、
ゴールまでの道を太くするイメージで
授業をしましょう。
では、解説です!
順番に解説します。
1 教材について
5年生「母さんの歌」(日本文教出版)
D 主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること
「感動、畏敬の念」
5・6年の目標・・・・美しいものや気高いものに感動する心や
人間の力を超えたものに対する畏敬の念をもつこと。
「母さんの歌」あらすじ
バスの終点「くすのきまち」
そこに大きなくすの木が立っていました。
くすの木の下で母親が子どもに歌を歌っています。
くすの木はあの日のことを思い出します。
1945年、広島に原子爆弾が落とされました。
くすの木は焼けていく町を見ていました。
ふと下を見ると、足下で女学生が、迷子になって
母親とはぐれた男の子に、子守歌を歌っていました。
朝、女学生の小さな母さんと、男の子は、
静かに死んでいきました。
目を閉じて、あの日のことを思い出すのでした。
2 内容項目と教材
・『畏敬』とはどういう意味でしょうか。
日常生活ではあまり使わない言葉ですね。
広辞苑では次のように書いています。
おそれうやまう。 すぐれた人を尊敬すること。
なるほど、と言いたいところですが、
もうちょっとストンと落ちる理解がほしいです。
・明鏡辞典では、次のように書いています。
偉大なものとして、おそれうやまうこと。
用例として、「宇宙の神秘に畏敬の念を抱く」 「神仏を畏敬する」
とあります。
・ということは、『畏敬』とは、
人の力がおよばないようなものを
大切に思う心と言えます。
・つまり、
感動=美しいものや気高いものをよいと思う心
畏敬=人の力がおよばないものを大切に思う心
とまとめられます。
・「母さんの歌」は、戦争が題材になっています。
特に視点が与えられなければ、
命に目がいきますが、
そればかりだと「生命の尊さ」という
別の内容項目になります。
・しかし、かといって「生命の尊さ」に目を向けたら失敗!
というわけではありません。
授業の切り口としては、むしろ「生命の尊さ」の方が
考えやすいでしょう。
・「生命の尊さ」から考え始めて、
「感動、畏敬の念」について気付かせるのです。
・今回の「母さんの歌」は、どちらかというと
感動を中心に考えた方がよいでしょう。
・では「母さんの歌」で、
美しいもの、気高いもの、尊いものとはなんでしょうか。
・★女学生が男の子の母親の身代わりになり、
安心感に包み込もうとした心。
☆女学生自身が自分の身が長くないことを知っており、
最後はなにかよいことをしようとした心。
☆くすの木が女学生と男の子を包み込む心
☆安心する気持ちを生む、母さんの歌。
・いずれも、全て触れなないといけない
というわけではありません。
・授業の中で子どもが気付いた視点に基づいて
進めればよいでしょう。
全て触れなくてよいと書きましたが、
★は考えてみたいところですね!
・Dの内容項目は、言葉にすると安っぽいものです。
例えば以下のとおり。
「命は大切」
「美しいものに感動する」
「自然は大切」
・これを見て、どう思いますか?
「知ってるわ!」と
ツッコミを入れたくなりませんか?
・そうです。
これがDの内容項目の難しいところです。
授業をしても、上の結論は変わりません。
しかし、授業で子ども達が議論をすることで、
その中身が深くなるのです。
先ほどお伝えした
「ゴールまでの道を太くする」ですね。
・だから、まとめでは無理に言葉にしなくていいです。
無理に言葉にしようとするから、
難しいと感じるし、
道徳が面白くないと思ってしまう原因となります。
・Dの視点では、余韻を大切にしましょう。
「人の心って美しいんだなあ。」
「わたしにもきれいなものを見たら
きれいと思う心はあるだろうか。」などと
生活の中で考え続けるようなものが
子どもの意見として出れば、
それで充分です。
3 導入
・「感動」や「美しい心」、「畏敬の念」などと
キーワードを出しても、
子どもは難しいので考えにくいでしょう。
・「母さんの歌」の中の「子守歌」をきっかけにします。
・「子守歌」ってどんなときに歌う?
・「子守歌」を歌ってもらったら、どんな気持ちになる?
・「子守歌」ってだれがだれに歌う?
・「子守歌」を切り口にして教材を見ると、
違和感が生まれます。
・戦火に包まれた町で、見知らぬ女学生が
見知らぬ男の子に子守歌を歌っているのですから。
・ここで、きっと導入で聞いた
「子守歌」の定義に、
「あれ?」という部分が出てきます。
・「子守歌は母から子へ歌うものだから、
この話の子守歌は意味がないのではないか。」
と、発問が生まれます。
・難しい題材は、子どもにとって身近なものか
考えやすいものから始めて、
いつの間にか道徳的価値について迫っていた、
という流れが理想的です。
4 発問
・子守歌は母から子へ歌うものだから、
この話の子守歌は他人が他人に歌っているから、意味がないのではないか。
・くすの木は幸せだったのだろうか。
・女学生は幸せだったのだろうか。
・男の子は幸せだったのだろうか。
・女学生があげたものはなんだろう。
・子守歌ではなく、食べ物や飲み物をあげたほうがよかったのではないか。
・男の子は幸せではなかったのではないか。
・なぜ女学生は子守歌を歌ったのだろう。
・女学生の心はきれい? 美しい?
・くすの木と女学生、同じ心はなんだろう。
・くすの木は、原爆が落とされた町をどんな思いで見ていたのだろう。
・女学生はそこまでする必要があったのだろうか。
・本当のお母さんの子守歌ではないから、
男の子は、本当は安心していなかったのではないか。
・なぜ、このくすの木はずっと植えられているのだろう。
5 まとめ
・先ほどもお伝えしたとおり、
まとめは無理に言葉にする必要はありません。
むしろ、言葉にしない!と言ったほうがよいでしょう。
・気を付けることは、
①「生命の尊さ」ではないこと
②戦争の学習ではないこと
を意識して、授業の終末では
この2点以外のことに気を付けましょう。
・内容項目は「感動、畏敬の念」です!
はい、ということで今日は
『5年「母さんの歌」【感動、畏敬の念】の指導案はこうする!』
このテーマでお送りしました!