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それは質問?それとも問い返し?

発問 問い返し

こんにちは。
今日は、『それは質問?それとも問い返し?』
このテーマでお話しします。

道徳に限らず、授業は教師の発言と、子どもの意見で組み立てられています。
教師が発する言葉は、子どもの思考の流れを促したり、時にはさえぎったりします。
何気なく発した言葉が、子どもの理解を助けることもありますが、
逆に理解を難解にさせる時もあるのです。
教師の授業中の発言は大きく次の3つに別れます。

 

似たような意味の言葉ですが、この違いを知って授業をするのと、知らずに授業をするのとでは、
子どもたちの学びに雲泥の差が生まれます。
子どもが主体的で、いきいきと活動している授業を見ますよね。
そんな授業をしている先生は、
実はこの3つの違いを理解して、使い分けているのです。

1つずつ解説をします。

1 質問

「○○したのは誰ですか。」
「この後どうなるんでしたか。」という類いのものです。
これは、教科書に書かれている人物の言動や、話のあらすじを確認するものです。

教科書を読んだら分かる、つまり分かっていることを聞くのは、質問ということです。
質問は、授業の導入で聞くのはよいでしょうが、授業の展開や終末で聞くのは、適切とは言えません。

なぜか。
質問は子どもの思考が発生していないからです。
道徳で質問をすると、子どもは教科書を読み取ります。
教科書から読み取ったことを発表します。
それは、道徳の活動ではなく、教科書から根拠を探すという国語的な活動です。

質問ばかりの授業は、子どもは発言しやすいですし、発表の回数も当然増えますから、
一見すると活発な授業に見えます。
しかし、子どもも教師も、勉強した「つもり」になっているだけであって、思考は生まれず、
道徳としての学びはほとんどないまま授業を終えてしまうのです。

 

2 切り返し

切り返しは、子どもの発言の真偽を問い、追い詰める発言です。
「本当に?」
「なんでそう思うの?」
というものです。

これは、字の通り、子どもの考えを「切って返す」ということです。
教師は、子どもの発言の真意を深掘りして聞こうという意図から発するのですが、
子どもからすると、「先生に全く意見を受け入れてもらえない」と感じさせる恐れがあります。

せっかく発言をしたのに、先生に聞いてもらえていないと感じてしまうと、次に発表する意欲は失われていくでしょう。
しかし、この『切り返し』が必ずしも悪いわけではありません。
先述した通り、子どもの発言をもう少し詳しく聞きたいときには有効な手段だからです。
切り返しに耐えうるメンタルをもっている子ならいいでしょうが、そんな子はごく少数です。

例えば、Aくんが「家族って地球と同じなんだと思う。」と家族愛の授業で発言したとしましょう。
なんだか、もうちょっと発言の真意を聞いてみたくなりますよね。
切り返しが有効な場面ですが、Aくんに「なんでそう思うの?」と聞くと、
ひょっとするとAくんは、自分の考えを説明するまでに充分な言葉をもちあわせていない可能性があります。

そんな時は、
「Aくんが今言ったこと、詳しく教えてくれる人?」と聞いて、全員の問いにすればよいのです。
つまり、全員に切り返しを行うのです。
そうすると、Aくんを含めた全員に思考が生まれます。

うまくいえない場合もあるでしょうが、
全員に切り返してみるという手法をもっておくと、
子どもを不必要に、執拗に追い詰める場面は、減っていくかもしれません。

 

3 問い返し

子どもの発言を一度受け止め、その次への一歩を導く発問が『問い返し』です。
これは、キーワードは「なるほど。」です。
子どもの発言をフラットな頭で聞き、教師も学習者として考える。
そして理解できたら、なるほどと受け止めて、「では、もし○○だったらどうだろう?」
「それはつまり~ということかな?」と、次の思考のステージへ子ども全員を導くのです。

問い返しは、子どもが「先生に聞いてもらえてる!」と思い、教師の受容的な態度を見せるのに有効です。
人は、子どもに限らずそうですが、「聞いてくれる人」には自己開示をします。
聞いてくれて、一度発言としてアウトプットすると、次の新たな思考が生まれます。
道徳の授業をしていると、子どもが時々、突拍子もないよう発言をしてくることがあります。

教師の理解が追い付かなかったり、子どもが冗談半分で言ってきたりと、様々なパターンがありますが、
まずは、一旦フラットな頭で考えてみましょう。
今までは「関係ないでしょ」と受け入れなかったことも、立ち止まってフラットな頭で考えることで、
語彙力が充分でない子どもの発言の真意が分かるかもしれません。

意外と、子どもはこちらの想像以上に、感覚的に道徳的な価値を理解していることが往々にしてあります。
よく「子どもがうまく発言できないんです。」「全然関係ないことを言うんです。」
という声を聞きますが、ひょっとしたら子どもはもう、教師に理解してほしくてメッセージを送っているかもしれないのです。

ひょっとしたら、教師の「子どもの発言を理解する力」があれば、理解できたかもしれません。
難しいことはありません。
道徳では教師も一学習者です。
子どもと同じように、「難しいね。」「なるほど。」「もっと詳しく聞きたいな。」という姿勢でいればいいのです。

道徳の授業は、教師が全ての学びの結論を知っておく必要はありません。
むしろ、教師も授業で学ぶというスタンスももっておくほうが、子どもの発言を親身に聞けるのです。

問い返しは、そういった学ぼうとする教師の姿勢を子どもに感じてもらいやすいですし、
授業がどんどん高みへ向かっていきます。
子どもが「発表したい!」と思う授業の秘密は、実はこれなんです!

 

はい、ということで、
質問、切り返し、問い返しと3つの発言の分類について説明しました。
自分の授業中の発言は、どれが多いと思いますか?

問い返しの割合が増えていくといいですね。
この3つについて考えることは、自己分析していることと同じです。
自己分析はいつでもできます。
ちょっとした時間に、自分の授業をざっくり振り返ってみて、
よりよい授業を創っていってくださいね!