こんにちは。
今日は『3年「持ってあげる? 食べてあげる?」【親切】の指導案はこうする!』
このテーマで教材解説をします。
「親切にしましょう」って子どもの頃から
よく言われましたよね。
困っている人を助けるとか
力を貸してあげるとか
その対象はお年寄りだったり子どもだったり
身近な人だったりと、いろいろです。
親切にすると、相手は当然喜びますよね。
じゃあ相手が喜んで、
自分は苦しい、もしくは悲しい気持ちになる行動は
親切と呼べるのでしょうか。
普通に親切にしたら、
自分はどんな気持ちになるのでしょうか。
親切という当たり前にわかっていることを
改めて聞かれると、「あれ?」となりますよね。
さらに、親切と一口に言っても
いろんな親切があるのか?
と考えたくなります。
これが、道徳の面白さです。
そして、これが多角的な考え方です。
今日は、親切について教材を使って考えてみましょう!
では、解説です!
順番に解説します。

1 教材について
3年生「持ってあげる? 食べてあげる?」(光村図書)
B 主として人との関わりに関すること
「親切、思いやり」
3・4年の目標・・・・相手のことを思いやり、進んで親切にすること
「持ってあげる? 食べてあげる?」あらすじ
2つの場面で構成されている教材です。
「わたし」は優しい人になりたくて、人に優しくすることにしました。
①みきちゃんにランドセルを「重いから持って」と言われたので、
優しい人になるために我慢して持ってあげました。
②たけしくんが嫌いなナスを、私はナスが好きなので食べてあげた。
2人とも嬉しくなるし、優しくできて嬉しくなった。
2 内容項目と教材
・もう一度、目標を確認してみましょう。
「相手のことを思いやり、進んで親切にすること」とあります。
『進んで』とありますね。
この部分がポイントになります。
・人は相手の気持ちを考えることができます。
相手の気持ちを考えて、自分の感情と共通する部分が見つかったり、
悲しみの気持ちや同情の気持ちが芽生えたとき、
何かをしてあげたくなります。
・それが、「進んで」の部分なのです。
相手が求めていないのに、進んでやることは親切ではありません。
相手の気持ちを考えずに行う親切は、もはや「大きなお世話」です。
・親切にもいろいろな形がある、という多角的な見方を
ここでは大切にしましょう。
そして、本当の親切とは何か、
まとめの段階で再定義をできると、
授業が締まります。
・この教材は、2つの場面がありますが、親切の質が違います。
①学校から帰るときの場面は、
みきちゃんに求められてランドセルを持ちますが、
「わたし」は我慢しています。
対して
②給食の時間の場面では、
たけしくんに求められてナスを食べますが、
「わたし」はナスが好きなので、前向きです。
・特に、②給食の場面では、
たけしくんの求めることと
「わたし」の求めることが一致しています。
一見、親切が成立しているように見えますが、
違和感が残ります。
この違和感はなんなのでしょうか?
・助けてほしい人がいて、
それを助けてあげる人がいることは、
親切とは呼ばないのでしょうか?
それとも親切と言うには、他に条件があるのでしょうか?
子どもと考えてみたいですね。
・この教材で親切を考えるにあたり大切なことは、
親切以外の内容項目も含んでいるため、多面的な見方が必須
ということです。
・例えば①学校から帰る場面。
みきちゃんはランドセルを持ってほしいと言っていますが、
「わたし」が持つことにより、
2こ持つ人と、1つも持たない人が出て、
公平ではなくなります。
これは、『公正、公平、社会正義』です。
・また、2人は友達でしょうから、
「友達」のことを理解し、助け合っている姿と言えます。
これは、『友情、信頼』です。
・さらに、相手のことを考える『相互理解、寛容』
相手に失礼なことをしないという『礼儀』
・たくさんの内容項目が詰まっているのです。
それらの核になるものが、
「相手のことを考えると、何か行動をしたくなる」という
人の本来もっている良心である、
『親切、思いやり』なのです。
・②給食の時間の場面も同じです。
『公正、公平、社会正義』
『友情、信頼』
『相互理解、寛容』
『礼儀』
さらにこの場面は、
給食を決められた量だけ、自分で責任をもって食べるという
きまりも関わってくるので、『規則の尊重』も含まれます。
・多くの道徳的価値を含む教材なので、
授業の核がぶれやすいですが、
『親切、思いやり』の項目であると忘れなければ大丈夫です。
・教科書では役割演技が紹介されています。
必要に応じて、役割演技をすることもよい手立てでしょう。
・役割演技の際の注意点は1つ。
『演技をした子にすぐに感想を聞かないこと』です。
みんなの前で役割演技をした子は、
多少なりとも気分が高揚しています。
直後に感想をもとめられても、
行為の意味よりも
「みんなからどう思われていたかな」
「うまくできていたかな」と
本筋ではない思考をしがちです。
みんなの前で演技をするのですから、
無理もありません。
・役割演技が終わったら、
見ていた子に「どうだった?」と聞きます。
そこで客観的な意見を聞くことで、
演じた子も落ち着いて
自分の気持ちを振り返ることができるのです。
・役割演技はこの順番を、特に気を付けてくださいね。
3 発問
発問のアイディアを紹介します。
ランドセルの場面は①、給食の場面は②としています。
○みきちゃんは悪い子だろうか。(①)
○2つの場面で、親切レベルが高いのはどちらだろう。(①②)
○「わたし」は、どちらも「よかった」と思っているが、2つの「よかった」はいっしょだろうか?(①②)
○もし、みきちゃんと友達のはるかちゃんのランドセルを「わたし」が3つ目としてもったら、それは親切だろうか?(①)
○「わたし」はクラス全員のナス嫌いの人の給食を食べれば、みんな助けられるのではないか。(②)
○「わたし」が断ったら、2人は友達ではないのだろうか。(①②)
2つの親切について、じっくり考えたいですね。
4 まとめ
いろいろ言いましたが、この授業の本質は2つです。
①自分を犠牲にする親切は、一時的に相手がいい気持ちになるだけ(ランドセルの場面)
②需要と供給が一致しても、それがルールに反していればダメ(給食の場面)
ということです。
①自己犠牲の親切、さらに相手に半ば強制されて行う親切は、いじめの構図と同じです。
自分は損をして相手は得をするという利害関係が発生したら、
もはやそれは親切ではなく、洗脳と呼びます。
②相手が何かを欲している、自分はその相手に何かを与えられる。
利害関係が一致して、互いによい関係のようですね。
でも、これが成立するならば、
覚醒剤を欲しい人と、売りたい人の商売が認められるということです。
でも、覚醒剤はダメですよね。
なぜか。
法律で禁止されているからです。
だから、互いによくても、
それが社会のルールやマナーに従っていなければ、
それは2人で勝手な行いをしていると言わざるを得ないのです。
まとめとしては、
・親切にするために大切なことは時と場合と状況を考えること。
結局はこれに尽きます。
「進んで」「自分から」という言葉も入れることは可能ですが、
今回の教材ではこの言葉は、
ルールやマナーに反する可能性があるので、
入れなくてもよいでしょう。
このまとめが、今回の内容を受けて、
子どもの発した言葉で表現できるとイイですね!
はい、ということで今日は
『3年「持ってあげる? 食べてあげる?」【親切】の指導案はこうする!』
このテーマでお送りしました!