こんにちは。
今日は『3年「お母さんのせいきゅう書」【家族愛】の指導案はこうする!』
このテーマで教材解説をします。
今日解説する『お母さんのせいきゅう書』は、定番教材です。
教科書会社によっては「ブラッドレーの請求書」として
題や登場人物が変わっていますが、内容は同じです。
では、解説です!
1 教材について
2 内容項目と教材
3 導入
4 発問
5 まとめ
順番に解説します。
1 教材について
C 主として集団や社会との関わりに関すること
「家族愛、家庭生活の充実」
3・4年の目標・・・・父母、祖父母を敬愛し、家族みんなで協力し合って楽しい家庭をつくること。
3年生「お母さんのせいきゅう書」(日本文教出版)
あらすじ
だいすけはお母さんに請求書を渡した。
【お母さんへの請求書】
おつかい 100円
おそうじ 100円
そろばんのごほうび 200円
合計 400円
お母さんはお金と一緒に、せいきゅう書も渡しました。
親切にしてあげた 0円
病気の時みてあげた 0円
服を買ってあげた 0円
合計 0円
だいすけはそれを見て、「自分の得になることだけしか考えていなかった。」と目に涙を浮かべた。
2 内容項目と教材
『ブラッドレーの請求書』の内容項目は「家族愛」です。
この内容項目は、点を線につなげるつもりで授業をしましょう。
つまり、現在の出来事だけを考えるのではなく、
・育ててくれた両親のこれまでの苦労
・両親から子どもを見たときの目線
・どんな子どもになってほしいかという願い
を考えます。
授業者が過去、未来に目を向けることが大切です。
『お母さんのせいきゅう書』は「二項対立型」がいいでしょう。
図のとおりです。
このように、関係図を書くことで、見えてくるものがあります。
「この矢印の意味は何だろう。」
「意味が変わった矢印はあるかな。」
「どちらが価値があるかな。」
これらのことを聞くことで、教科書に書かれていない道徳的価値に気付くことができます。
それが、多面的・多角的に見るということなのです。

『お母さんのせいきゅう書』では、発問をすることで、教材を「多面的」に見ることができます。
そして、多面的な見方から見えた考えを友達と突き合わせることで、考えの幅が広がります。
その議論を重ねることで、内容項目の「家族愛」を多角的に見ることができるのです。
さて、この授業をすると、
どんな考えが出ると思いますか?
授業の流れを一例として紹介します。
しかし必ずこの通りになるとは限りません。
いえ、むしろなるはずがないでしょう。
それは、先生と子ども達が違うんですから。
どんな授業がよいとか悪いとかではなく、先生と子どもで、唯一無二の授業を作ってください。
それが何より、尊いのです。
イメージをもってもらうために、授業の流れの例を紹介します。
先:先生 子:子ども
先:どちらの請求書が値打ちがあると言えるかな?
子:うーん。・・・・。
先:3つのうちどれかに手を挙げてください。
1つ目、ブラッドレーの請求書に値打ちがある。
2つ目、お母さんの請求書に値打ちがある。
3つ目、どちらとも言えない。
子:(それぞれに手が挙がる)
先:何か言いたいことある人?
子:私は、お母さんの請求書の方が値打ちがあると思う。
ブラッドレーはお金を要求していたけど、
お母さんは0円でお金を求めていないから。
子:ブラッドレーの方が値打ちがあると思います。
やっぱりお手伝いだから、手伝いをした分はお金をもらうべきだと思う。
子:アルバイトと同じ!
先:なるほど。家事はアルバイトと同じということですね。
子:でも、お母さんは0円だから、いらないって言ってる。
先:本当ですね。お母さんはお仕事が好きだから、タダでいいよ、
タダでアルバイトするよって意味で0円としたのかな?
子:うーん。(そうではない気がする。)
先:何か言いたいことある人?
子:お母さんは、ブラッドレーからお金をもらわないのは、
ブラッドレーに感謝しているからだと思う。
先:お母さんがブラッドレーに感謝?
子:お母さんはブラッドレーに、生まれてきてくれてありがとうと
思っている。感謝をしているから、お金なんていらないと思っている。
先:なるほど。
子:わかった。ブラッドレーはそのお母さんの感謝の気持ちに気付いたから、
涙を流したんだ。
先:どういう意味の涙?
子:自分のことしか考えていなかったけど、
自分もお母さんに感謝の気持ちがあったって気付いた涙。
先:反省の涙ってことですね。
じゃあ家族って、「お互いに感謝している関係」ってことですね。
いかがでしょうか。
これは考える時間や脱線も省いていますので、こんな台本のようなすっきりしたやりとりにはなりませんが、大まかな流れはこの通りです。
たまたま、「家族は感謝し合う関係」という流れになりましたが、他にも家族愛を多面的・多角的に見たまとめならよいでしょう。
大切なポイントは、
子どもの言葉を使う
ということです。
先生がかっこつけて、大人の言葉でまとめると子どもは興ざめです。
無理に大人の言葉に変換しなくてもいいです。
子どもの言葉は純粋さの塊です。
子どもの言葉を紡いで、授業を作り上げていきましょう。
3 導入
T:教師 C:子ども
T:「家族」ってだれのことを言いますか?
C:お父さん。
C:お母さん。
C:(略)
T:じゃあ「家族」ってなんですか?
C:同じ家に住む人。
C:なにかをしてくれる人たち。
T:なにかをしないと家族じゃないの?
or
T:一緒に住んでいるなら、ペットもテレビもベッドも家族と呼べるの?
※ちょっと突っ込んだ発問をすることで、「家族」の定義を考え直すきっかけを作ります。
4 発問
・どちらの請求書が値打ちがあるだろうか。
・この請求書は、いつから続いているのだろうか。
・この請求書のルールは、これからも続くだろうか。
・だいすけがしたことは、間違っているのだろうか。
・だいすけの涙には、どんな意味があるのだろう。
・お母さんの請求書にはどんな意味があるのだろう。
・請求書がないと、だいすけは頑張れないのだろうか。
・請求書を作る前は、だいすけは何を目標に家事をしていたのだろう。
・お母さんはなぜ0円の請求書をわざわざ渡したのだろう。
・だいすけとお母さん、どちらが相手を大切に思っているだろうか。
・だいすけは、「いい子」だろうか。
・お母さんは、「いいお母さん」だろうか。
それぞれ、考える価値のある深い発問です。
大人でも難しい発問ですよね。
「そんな難しい発問、子どもには無理だ」と思っていますか?
ほとんど、私が授業で3年生に投げかけたものです。
これらの発問に立派な考えを言いましたよ。
「これは無理だろう」は、頭の固くなった大人のエゴで、
実は頭の柔らかい子どもは、道徳性を深める素地は充分あるのです。
しかし、とはいっても子どもはすぐに考えを言えません。
子どもにとっても難しいものです。
1つ発問をしたら、シーンとなります。
必ずシーンとなります。
それは、「答えられないシーン」のではなく「考えているシーン」なのです。
その時に聴いてみてください。
「時間をかけて考えたい人?」
きっと多くの手が挙がるでしょう。
そこで、
「(ノートに)書いてみましょう。」
「友達と話してみましょう。」
ということで、書くことや話し合いが有意義なものになるのです。
5 まとめ
家族がみんなで協力して楽しい家庭を作るために大切な心について、子どもの言葉でまとめましょう。
家族みんなのことを思いやる
自分のことを優先しない
自分のため、家族のためにどんなことをしてくれているか想像する
感謝の気持ちを伝える
などでしょうか。
他にも教師の想定を超えてくるまとめがでると、授業が面白くなりますね!
はい、ということで今日は
『3年「お母さんのせいきゅう書」【家族愛】の指導案はこうする!』
このテーマでお送りしました!
また明日もお楽しみに。
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