こんにちは。
今日は『【授業スキル】プロの教師は、方法を目的にしない。』
このテーマでお話します。
「手段を目的にしてはいけない。」
初任者の頃から、私はよくこのような指導をされていました。
正直、その当時は意味が分からず、
聞き流していました(笑)
しかし、実践を重ねるうちに、
この「手段を目的にしてはいけない。」という意味が
次第に分かってきました。
今日は、若い頃の私のように意味が分からないという方向けに
かみ砕いてお話をします。
目次です。
順に解説します。
1 旅行の目的は、新幹線ではない
とにかく分かってほしいので、
授業の話から外れます。
旅行に行ったときのことを想像してください。
旅行は何のために行きますか?
おいしい物を食べる
有名な場所に行く
きれいな景色を見る
人に会う
等、行った先でのことを目的にすることでしょう。
「新幹線に乗ること」が目的で旅をすることはありますか?
きっと、新幹線好きな人を除くと、
ほとんどの人が新幹線は「移動手段」と考えるはずです。
つまり、旅行の目的は新幹線に乗ることではなく、
新幹線という手段を使って、旅先に行って、
何かしらの活動をすることが目的なのです。
しかし、これがこと授業の話になると、
新幹線に乗って満足して、
そのまま家に帰る人が多いこと多いこと。
そのちぐはぐさに気付いていない人がいるのです。
昔の私のように・・・・。
では、次に具体的にどんな活動で
手段が目的になっているかお話しします。
2 目的化しがちな活動3つ
では、特に手段だけで満足してしまいがちな
授業の中での活動を3つ、例として説明します。
①話し合い
今は感染防止のため、おこなっているクラスは少ないでしょうが、
「隣の人と話し合いましょう。」
「グループで話し合いましょう。」と
指示をして2~4人で子どもたちが話し合うことがあると思います。
この話し合い、何が目的化しているのか。
「2人」「3人」「4人」など
人数にこだわっている人を時々見かけます。
また、話し合いのためにわざわざ机を移動させて、
グループの中で意見を順番に言って終わり、
というグループを見かけるときもあります。
話し合いは、話すことやグループで固まることが目的ではありません。
友達と意見を交流することで、
自分の考えを他の人とすりあわせて、論点がずれていないかを確認したり
友達の考えを聞いて新しい視点を得たり、
考えを練り合うことで新しい考えを生み出したりすることを
ねらいとしています。
しかし、話し合いをすること自体が目的化してしまうと、
順番に発表して終わり
というむなしい時間になりかねません。
話し合いは、メリットの多い効果的な授業スキルですが、
多用しすぎるとマンネリ化します。
また、授業者が子どもの話し合いの先に
どんなことをねらっているのかをもっておかなければ、
話し合いをすることがゴールとなり、
子どものいきいきとした話し合う姿は
期待できません。
②ワークシート
次はワークシートです。
道徳ではワークシートを準備して
子どもの活動のために使う先生が大勢います。
ワークシートの注意すべきことは、
「綿密なワークシートは、書いているだけで満足してしまうこと」
です。
ワークシートって、凝ったものを作ろうと思えば、
いくらでも凝ることができるんですよね。
子どもの思考がスムーズに流れるように、
また、分かりやすいように。
「時間をかけて、いいものを作ろう」と
思ってしまいがちです。
そして、実際の授業で
子どもがワークシートにたくさん書いている。
それで満足してしまう。
時間をかけて作ったワークシートに、
子どもが夢中で取り組んでいる。
この瞬間は、きっと教師として至福の喜びでしょう。
頑張ってよかった!と思える瞬間の1つです。
しかし、そこで自己満足して思考がストップしては、
手段が目的化していると言わざるを得ません。
大切なのは、ワークシートに書かれた子どもの考えです。
そして、書くだけでなくそれをもとに
話し合ったり、練り上げたりすることが大切です。
いいワークシートに書かれた考えが、
いい考えであるなんて保証はありません。
ワークシートに書かれた考えは、
スタート地点です。
その子どもの考えを、
どう授業に生かしていくのか。
この部分を、ワークシートにかけた労力以上に
計画を想定しておかなければ、
イイ授業にはならないですし、
ワークシートが目的化していることになるでしょう。
③説明
子どもが黒板の前に立って、
先生のようにみんなに自分の考えを説明する、
という場面はよくあるでしょう。
しかし、これも注意が必要です。
なぜなら、みんなの前で説明することは、
多くの要素が絡み合って、
プレッシャーを感じやすく、
説明の質に目が行きにくいからです。
前に出て話すのは、
・声が適切な音量か
・みんなの方を向いているか
・読みやすい字か(字を書く場合)
・みんなにきちんと見えるか(実物投影機で映す場合)
・早口ではないか
・緊張で言葉が詰まらないか
などと、
多くの障壁を乗り越えなければなりません。
ここで、先生の授業スキルと比べてはダメですよ。
先生は、年間1000時間以上も子どもの前でしゃべるし、
勉強して教員免許を取っているのですから、
しゃべりに関しての知識や経験は、豊富にあって当然です。
子どもは、いきなり与えられた問題に対して
いきなり説明を求められるわけです。
※自主的に挙手をしても同じです。
ほぼぶっつけ本番で見切り発車の説明が、
先生と同じようなクオリティーでできるはずがありません。
でも、それでも頑張って発表した子には、
「頑張って言えたたね。」
「上手に説明できましたね。」と
声をかけたくなります。
あれ?
説明の目的って、
頑張って言うことでしたっけ?
上手に説明して先生に褒められることでしたっけ?
説明すること自体が目的化していませんか?
説明の目的は、
大勢の人が気付いていない視点や考えを、
本人が直接具体的に説明することで、
気付いていない視点に気付き、
理解を深めること
ではないでしょうか。
でも、みんなの前でプレッシャーに耐えながら
頑張って発表している子には、
その説明の質は後回しにして、
立ち振る舞いを認めてあげたくなるものなのです。
気をつけなければ、
みんなの前で説明することは、
目的化しやすいです。
3 コツは「先を見る」
では、どうすれば目的化しないのでしょうか。
それは、先を見ることです。
①話し合い・・・・話し合って、子どもに何を得てほしいのか。
②ワークシート・・・・書かれた子どもの意見を、どう話し合いにつなげるのか。
③説明・・・・本人が直接説明することで、聞く人はどんな気付きを得てほしいのか。
先を見て、どんな子どもの姿になってほしいのか、
想像することが大切です。
忙しい現場では、
どうしても手段に走りがちです。
本やネットでも、
「簡単にできる~」と言った類いの情報が
溢れています。
しかし、手段はあくまでも手段です。
その手段だけを見て飛びつくのではなく、
その手段を使って、
どんな子どもの姿になってほしいのか。
それが自分の思うところと合致しなければ、
手段だけに飛びつくのは安易で安直としか言えません。
そんな私も、昔はハウツー本を買いあさって,
たくさん実践していましたが・・・・。
手段だけで目的のない実践を繰り返していては、
経験を重ねても何も残りません。
いつも目的を見据えながら、
手段に意味を持たせる。
これを考えるくせをつけておくと、
経験を重ねれば重ねるほど、
いい実践ができるようになります。
手段を目的化せず、
血の通った実践ができるプロ教師を目指しましょう!