こんにちは。
今日は『2年「七つの星」【感動、畏敬の念】の指導案はこうする!』
このテーマで教材解説をします。
Dの内容項目は、
「価値の広がりを目指す」
ものではありません。
A~Cの内容項目は,広がりを目指すものです。
例えば、親切は「何かをしてあげること」だ
と思っていた子どもたちが、
授業で議論をすることで、
「何もしない親切もある」と気付いたら、
それは見方が広がったと言えるでしょう。
しかし、Dの内容項目はそのような広がりは
ほとんど期待できません。
そもそも抽象的なものが多く、
議論で広がったとしても
さらに抽象的なものになってしまうからです。
そうなると余計に「道徳は難しい!」と考える
子どもや先生を増やすだけです。
そうではなくDだけは、
ゴールまでの道を太くするイメージで
授業をしましょう。
では、解説です!
1 教材について
2 内容項目と教材
3 導入
4 発問
5 まとめ
順番に解説します。
1 教材について
D 主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること
「感動、畏敬の念」
1・2年の目標・・・・美しいものに触れ、すがすがしい心をもつこと。
2年生「七つの星」(日本文教出版)
病気のお母さんをもつ女の子が水を探しに出かけました。
でも水はどこにもありません。
女の子は疲れて草の上に倒れてしまいましたが、目を覚ますと手に持っていたひしゃくにきれいな水がいっぱい入っていました。
その水を困っている様子の犬にあげると、木のひしゃくが銀のひしゃくに変わりました。
帰ってお母さんに飲ませようとすると、「お前、先にお飲み。」と戻されたひしゃくは、銀から金のひしゃくに変わりました。
そのときやってきた疲れた旅人に水を飲ませると、ひしゃくの中からダイヤモンドが七つ飛び出し、水があふれてきました。
そのダイヤモンドは、空にのぼり、今も美しく北の空に輝いています。
2 内容項目と教材
感動って日常生活でよく使う言葉ですが,
感動とはどういう意味ですか?と聞かれ,
即答できる人は少ないのではないでしょうか。
広辞苑には次のようにあります。
感動[名](スル)ある物事に深い感銘を受けて強く心を動かされること。
つまり、心が動かされることが感動と言えます。
では、感動する対象はどんなものがあるでしょうか。
・感動する映画を観る。
・本を読んで感動する。
・美しい自然を見て感動した。
これらのように、実際に存在するモノに対して感動することは想像しやすいです。
では「七つの星」は、感動の対象はなんなのでしょうか。
映画や本は出てきていません。
主題に「うつくしい心」とあるように、感動の対象は『心』です。
女の子の美しい心が、この教材の中心なのです。
では、女の子のどんな心が美しいのか。
考えてみましょう。
・お母さんのために、体力の限界まで水を探しに行った。
・偶然にもやっと手に入れたたった1杯の貴重なひしゃくの水を、のどが乾いている犬にあげた。
・お母さんのためにやっとの思いで手に入れた水を、自分は後回しにしてお母さんに渡した。
・お母さんも自分ものどが乾いているのに、たまたま来た旅人にあげた。
作り話だから!で済まさずに、現実的に考えてみてください。
ちょっとありえないぐらいお人好しですよね。
水は生死に関わる重要なことです。
ひょっとすると今目の前にある水を飲めなかったら死ぬかもしれない。
そんな過酷な状況に追いやられても、まだなお相手のことを思いやっているのです。
犬や旅人という、相手の立場に関係なくです。
これは現実的になかなかできることではないですよね。
そもそも、現代で水に困ることは少ないし、この話と似たような境遇になることはほぼないでしょう。
でも、抽象化してみると、この教材から学ぶことが見えてきます。
女の子は、人の良心を表していると言えます。
そして犬やお母さん、旅人は周囲の人と置き換えてみましょう。
自分が困った時でも、周りの人を助けることができる。
しかも相手の立場や状況は関係なく、無条件に自分ができることをする。
相手のことを思いやる、「親切、思いやり」に似ていますが、
その範疇を大きく越えている心とも言えます。
相手のことをとことん考えて、尽くす心。
この女の子の相手のことを思う心が、「美しい心」と言えるのです。
そして、その女の子の心を具体物として表しているのが、
ひしゃくとダイヤモンドです。
ひしゃくは木→銀→金→金からダイヤモンドと、
だれもがわかる「バージョンアップ」をしていきました。
具体的なモノをこうして段階的に上げていくことで、
女の子の「美しい心」が段階的に上がっていることを表現しているのです。
また、最後にはダイヤモンドがひしゃくから表れています。
旅人への思いやりが最上級という意味ではなく、
犬、お母さん、旅人と立場の違う三者に、
別け隔てなく思いやりをもった女の子の心が、
ダイヤモンドの美しさと等しいという表現なのです。
そして、ダイヤは北の空に七つの星として輝いています。
これは、女の子の心=夜空の美しさという比喩表現です。
星の浮かぶ夜空の、広くて吸い込まれるような美しさと、
女の子の心が等しいという形容の表現なのです。
ただただ、女の子の行動だけを描写しても、
「いい子だね」で終わってしまいます。
しかし、命に関わる状況で人に思いやりを持ち続けた女の子の心を、
ひしゃくという身近なものが変化していく表現をつけることで、
人の心・良心は無限の広がりがあるように感じるのです。
女の子の心は、夜空のように広くて美しい。
このことに着地できれば、この授業は成功と言えるでしょう。
この教材はファンタジー教材です。
なぜひしゃくが変わるのか、というところは深入りせず、
ひしゃくやダイヤモンドは何を象徴しているのか、というところに焦点を当てると、
ファンタジー教材で感動を考えるよさがわかってきます。
3 導入
T:教師 C:子ども
T:「美しい」ってどういうことですか?
C:うーん。
C:きれいなこと。
T:なるほど。では美しいものって何がありますか?
C:○○
※ここでは、人や物など物理的なものの意見がほとんどだと思います。
景色や人の心など抽象的なものになったら、「どうして?」「もっと詳しく教えて。」と突っ込んでみます。
4 発問
・女の子は、自分が飲んでから犬にあげたら、銀のひしゃくになっただろうか。
・旅人はなぜ女の子の家を選んだのだろうか。
・女の子は、お母さんに頼まれて水を探しに行ったのだろうか。それとも自分からだろうか。
・女の子が犬を思う気持ちと旅人を思う気持ちは同じだろうか。
・この話で喜んでいるのはだれだろう。
・なぜ七つの星は今でも輝いているのだろうか。
・この話でどの場面が心に残っているか。
・なぜ「七つ」なのだろう。犬・お母さん・旅人の3つの思いやりの星ではダメなのか。
・このあと、みんなは水を飲めたのだろうか。
5 まとめ
繰り返しますが、無理にする必要はありません。
「美しいものは、たくさんあるんですね!」と一言だけ言って終わってOKです。
まとめよりも女の子の心を、発問で深堀りしていく時間を大切にしましょう。
はい、ということで今日は 『2年「七つの星」【感動、畏敬の念】の指導案はこうする!』
このテーマでお送りしました!
また明日もお楽しみに。
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